想い出の中の虹
彼女の希望
美羽の誕生日。

それは、美羽がこの世界に産まれた日ではなかった。

美羽の誕生日。

それは、産まれた命がひとりぼっちになった日。

産まれて間もない命が、あのいつもの公園のベンチに託された日。


『美羽』


とだけ書かれたおくるみに抱かれた赤ん坊。

静かに降り続ける雨の日。

ベンチの赤ん坊をかばうように伸びた樹の枝。

今、大人になった美羽は、この樹の下で自分の存在を見つめようとしている。

愛されるべき人に愛されずに大人になった美羽は、驚くほど周りを愛する人になった。

優しい人になった。

強い人になった。


『大好き』


そう呟き、自分を自分で好きになることで必死に大人になった。






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