想い出の中の虹
冷め始めたどんぶりは、ちょっぴりだけ、彼女の消えかかる微笑も冷えさせる。










「私のせいで泣いてるんだなって………だから、大嫌いになったんだ。」









そっとどんぶりに両手を添える。


「冷めちゃったかな。」


肩をすくめ、箸を手にした。

そして、一口。


「…………おいし。」








はらり…と落ちた雫。



「美羽……。」


かける言葉が見付からなくて………。

それでも、その哀しい雫をしっかりとこの目で見届けなくちゃいけない。


「それ、半分こ……しよっか。」


冷めたどんぶりを引き寄せ、空になったどんぶりに中身を移した。

三分の一程を残し、どんぶりは、再びお互いの前に並ぶ。


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