想い出の中の虹
「美……?」


ふわっと寄ってきた柔らかな瞬間。


「ちゃんと休めるように、おまじない。」


優しく微笑んだその頬。

ほんのり紅くなったその頬。


「………効いた?」


「めっちゃ効いた。すげぇ寝れそ。」


「うん。」


「ねぇ、美羽?」


「ん?」


「大好き。」


「……ありがと。」


紅い頬が、また少し紅くなる。


「紅いよ?」


「………ばぁか。」


いーだ………って唇を横にしてすねながら帰って行く後ろ姿を見つめながら、頭の片隅に追いやっていた大切な人の大切な日のことを引っ張り出していた。

それからも暫くは、大切な日の過ごしかたが、心のほとんどを占めていた。



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