あたし


男はそう言ってあたしに手を差し出した

あたしはその手を握りステージに登る

「亮ー準備いいー?」

あたしがマイクをセットしてると男が亮さんに何かを頼んでいた

「んぢゃっ!」

カンッ カンッ カンッ カンッ

~♪

決して広いとは言えないこの小さなライブハウスにあたしの声とみんなの音が響いた


曲が終わるとみんなが口々にヤバイとか凄いって言っていた

脱力してステージに座り込んでいたあたしに合わせてしゃがんだ男は頭に手を乗せて

「よくできました」

なんて一言を残し亮さんから何かのカセットを受け取ってステージを降りて行った


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