揺れる虹
「行くか?」


「はい。」


世話がやけるんだから。と笑う中村さんと新幹線に乗り込んだ。

膝に載せた弁当は、賑やかな彩りで飾られていて、栄養もたっぷりで………。

足りないものはたったひとつ。

動き始めた新幹線の窓を眺めながら、そのたったひとつを想っていた。


「ちょっと電話してきて良いですか?」


「ん?あぁ、あんまりふらふらすんなよ?」


「すぐ戻ってきます。」


空席の目立つ車両を歩く。

デッキに出た途端に溢れる溜め息。

そして、流れる景色の側に背中を向けて佇む人影。

見覚えのある服。

見覚えのある靴。

見覚えのある………バッグ。

心臓が止まる。

息が出来ない。

頭の中が思考をやめた。






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