揺れる虹
「美羽、熱い。」


「ん…………な……に」


重心が少しずつ下がり始める。


「美羽?」


襟元に指を這わせ、熱さを確認。


「熱……あるのか?」


「……………だいじょ……」


ずるりと抜けおちる力。


「美羽!」


慌てて腰を支え、顔を覗き込む。

紅い頬と濡れた瞳。

熱い吐息が速いテンポで吐きだされる。


「ごめ……。大丈夫。移しちゃう。」


腕を伸ばし、離れていく。


「大丈夫。帰ったらちゃんと薬飲んで寝るから。」


大きな深呼吸をしながらなんとか体を立て直す。


「待ってて。」


すぐに座席に戻り、中村さんに正直に話す。


「お前、ここにいろ。」


「え?」


「悪いようにはしないから。お前が動くと目立つ。良い子にしてろ。」



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