sugar voice
暫くしたら「行ってきまーす♪」と軽快な声と共に玄関のドアを開ける音がして
それから間もなく車のエンジン音が聞こえて段々と小さくなっていった
「…行っちゃった」
ガランと静まり返った家
家にいるのは私だけ
「…なんか寂しいな」
アハハッて馬鹿みたいに笑ってみるが余計に寂しさが募るだけだった
風邪をひいたら人肌が恋しくなるっていうのはどうやら本当のようだ
さっきまで聞いていたお母さんの声が妙に懐かしく思える
今頃お母さんはsugar nightのライブを思う存分楽しんでいるのだろうな
'…なんだよ'
「……ッ」
急に頭の中で柳井の冷たい声が響いた
なによ…
私は悪くない
悪くないの?
いや、悪いんだ
「…柳井」
ボソリと呟いたアイツの名前
誰にも聞かれることなくその声は静かに消えていった