sugar voice
たった一席だけ
前から二列目のステージのほぼ中央
だから余計にその空間が目立った
「……ッ」
「………」
空席を見て一瞬曇ったカズの顔をシンは見て見ぬ振りをした
「さて、カズの謝罪も済んだことだし早速一曲いきますか」
「一曲目は僕達のグループの名前でもあるこの曲だよ☆」
ナツはシンに向かって軽くウインクすればシンがフッと笑ってマイクを持ち直す
それが俺達の合図
流れるようにそれぞれ自分の持ち場へつく
俺は肩に掛けていたベースを持ち直してかまえた
「それじゃあ聞いてくれ
'sugar night'」
シンのとろけるような甘い声に三人のそれぞれ奏でる透き通った音をのせて
俺達のライブは始まった