sugar voice
「ねぇ…菜月なんでしょ?何その格好…」
確かめるようにもう一度問い掛ける
バレ…た
「あの、人違いです」
「嘘。菜月の顔を見間違えるはずがないわよ」
苦し紛れに言った言葉は母親に通用する筈もなく、この場から早く立ち去ろうとしていた私の手を強く掴んで引き止めた
「どうやって来たの?」
「…電車乗り継いで、それからタクシー乗ってきた」
お母さんの手を払いのけながら淡々と言う
「そう。でもさっきまで熱あったわよね?また熱が上がったらどうするのよ!?」
だんだん興奮してきたのか声を荒げていくお母さん
「薬飲んで来たから大丈夫だよ」
なんとかこの場に居られるようあれこれ言い訳するけど
「そんなこと分からないでしょ!?もう連れて帰る!!」
私の話に全く耳を傾けようとしないお母さんは、私の手を乱暴に掴むと出口の方へ歩き出した