sugar voice
視線の先に-菜月side-
――――――――…‥
深い闇のように暗くて
果てしなく続きそうな長い通路を
ただひたすら前だけを見て走っている二人
一人は上下紺に水色のラインがはいったジャージ姿の女
もう一人は長身で、鮮血のように真っ赤な服を身にまとい、軽やかに走る男
「ハァ…ハァ…」
聞こえてくるのは激しい息遣いと
衣服どうしのこすれる音だけ
他は何も聞こえない
「…ッ…こっちだ」
曲がり角にさしかかったところで柳井が口を開いた
「…え…ッ…」
返事をする前に体が大きく半回転し、ガチャンという音が耳をかすめる