sugar voice
カツ…カツ…カツ…
柳井が履いているブーツの音が静かな廊下に鳴り響く
「………」
柳井はただ前を向いたまま歩くだけで
私を背負ってから一言も言葉を発していない
「ねぇ…重くない?」
沈黙が嫌になり、思わず話し掛けてみた
「……ん、別に大丈夫」
少し反応が遅れて、たった一言喋るだけだった
あ…ちょっとウザかった?
心配になり横目で柳井の顔を盗み見ると
険しい顔をしてなにやら考え込んでいる様子だった
「なぁ…架山」
少しの間があき、柳井が重い口を開く
「今からどうでもいい話をしていいか?」
「…うん」
さっきの声とは裏腹にすごく明るい声でそう言われ、私は軽く頷いた
どうでもいい話…と柳井は言ったけど
今からすごく大事な話をしそうな雰囲気だったから…それ以上何も言えなかった
「………」
柳井はフゥ…と息を吐いて、ポツリ…ポツリと話し始めた