sugar voice

着替えを済ませて階段を降りると、美味しそうな匂いがしてくるリビングへ足早に向かう


リビングのドアをゆっくりと開けると、テーブルの上には真っ白なご飯に味噌汁と卵焼き

まさに和食の基本的なメニューが並んでいた


「おはよう」

お皿を並べているお母さんに一言言って椅子に座る


「あら、菜月(ナツキ)おはよう。珍しい事もあるわね」


お母さんは少しびっくりしたような顔をしたが、すぐにニコッと笑って私の前にお箸を置いてくれた


「うん。今日から高校生だし…ちょっと早く起きてみた」


少し自慢げに言うと、パクパクと次々に料理を口に運ぶ


「そうだったのね。あっ…そうそう、お父さん今日帰ってくるわよ♪」


「本当!?」


私はびっくりして思わず立ち上がったが、お母さんにやんわりとたしなめられる


お父さん…架山成治(カヤマ シゲハル)は飛行機のパイロットで世界中を飛び回っている♪

優しくて格好いい自慢の父だけど

ちょっと過保護すぎなんだよねι


帰ってくるのが年に二、三回ぐらいで、一回で一週間ほど休暇をもらうらしい


そのお父さんが帰ってくるんだから嬉しくないはずがない


「だから今日は早めに帰ってくるのよ?」



自分では気付いていないがお母さんは、少し声が高くなっている


「分かってる。ごちそーさま」

二つ返事で返して

喜びが全身から滲み出ているお母さんを見て思わずクスリと笑うと、ゆっくりとお箸を置き

隣の椅子に置いてあった鞄を手にとると


「行ってきまーす♪」

軽い足取りで家を飛び出した

―――――…‥

< 3 / 375 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop