sugar voice


「ハイッ!!」

目標を変えたのか麻山先輩に眼鏡の奥から覗く切れ長の鋭い目で睨まれ、すぐさま背筋をピンッと伸ばす



「…もう分かっただろ?みんな昔の話なんか気にしてない。だから、そんなに気を張るな。

暇ならカメラを磨け、次のコンテストに出す写真の題材を考えろ、掃除をしろ。

いいな?」


ビシッと私を指差して一息で言ってのけると、ほんの少しだけ口元を緩めた



「え……」

それって…麻山先輩も誰も最初から怒ってないってこと?



「~~麻山先輩!!」


その言葉が嬉しくて、勢い良く麻山先輩に抱き付いた


「……はッ!?」



「…う…わ」

「ちょ…菜月ちゃん!?」

「…やるねぇ」

私の行動が予想外だったのか

清水先輩は口をポカーンと開けていて、瑞希先輩は慌てふためく

鈴ちゃんはというと…欠伸を噛み締めながらも愉快そうに口角を上げていた


「もう迷惑かけませんッ!!部活も頑張ります」

清水先輩みたいに腰に手を回してギュッとすれば、麻山先輩は切れ長の目を大きく見開いて



「途端に元気になりやがって…お前は子供かι」

溜め息ついでに発した言葉

だけど声色は優しくて

私の頭をポンポン叩くと、視線を逸らして眼鏡をクイッと上げた



「ありゃ、意外」

「ほんと…清水が抱き付いたら即行引き剥がしにかかるのにね」

瑞希先輩は物珍しそうに顔を覗き込んでニヤリと笑った

「…お前な」

みるみるうちに麻山先輩の顔が険しくなっていく


「え…あっ!!すいません!!嬉しくて思わず…」


かなり怒ってらっしゃるーー!!

私は麻山先輩になんて恐れ多いことを…!!

今更ながら自分のした事を後悔し始めて


勢い良く麻山先輩から離れた



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