sugar voice
 


「…おい」

「うぇっ!?はい!!」

いきなり耳元で低い声が響いて思わず飛び退く

「ジロジロ人のもんを見るんじゃねぇよ。シバかれたいか?」

声の主は笹倉さんで、私に刺すような視線を向けたあと小さな四角いテーブルの上にマグカップを二つ置いた

一つは私の目の前に、もう一つは向かい側に座った笹倉さんの目の前に

「すいません…」

謝罪とも感謝ともとれる言葉に笹倉さんは少し眉を上げただけで何も言わず、代わりに煙草に火を点けた

なんとなく気まずい雰囲気になってしまい、視線をマグカップへ移すと中に入った液体を一口飲んだ


苦手なコーヒーかと思ったがカカオの香る美味しいココアで、ビターチョコを入れたのか後からほろ苦さが口に広がる

「…美味しい」

「当然」

思わず漏らした言葉に笹倉さんは自信たっぷりにニヤリと笑うと口から煙を吐きながら、玄関の方をチラリと見やる

「今からもう一人来る。話はそれからだ」

「…え?」

誰が…?と聞く前にピンポーンと軽快な音が鳴り響いて

笹倉さんはゆっくりと腰を上げ、玄関へ向かった




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