sugar voice
ガチャッ
「お、早いな」
「そっちが早く来いって脅してきたんだろ?」
よく響く、透き通った声が玄関から聞こえてきて
声からして男性だろうな…とココアを飲みながら他人事のように思う
そして、私はその声を知っているけど、誰かまでは分からない
玄関で笹倉さんと一言二言話して男は中へ入ってきて
私は徐に声のする方へ顔を向ける
男の声は段々と大きくなってきて
やがて姿が見えた
「………」
金色の長い前髪を鬱陶しそうに掻き上げながらリビングへ入り、私を見つけるなり立ち止まって無表情な顔で見下ろす
「お前が架山菜月か」
「……ッ」
端整な顔に嵌め込まれた二つの金色の宝石のような瞳に見つめられ、言葉が出ない代わりに小さく頷いた
嗚呼駄目だ…この人の目は
何もかも呑まれてしまう
「……シン…さん?」
その声は思っていたより震えていた