sugar voice

――――――――………‥


「…う…わぁ…」

小さなボストンバックを片手に目の前にそびえ立つ大きな建物を見上げて小さく感嘆の声をあげる

「…って、ここどこ?」

ホテル…とはちょっと違う感じだけど

キョロキョロ辺りを見渡してある文字を見つける

"EGG HUNT PRODUCTION"

えっぐはんとぷろだくしょん?

入り口にでかでかと彫られているこの建物の名前であろうものを読みながらどこかで聞いたことがあるような…と首をかしげる

「なにボサッとしてる。早く来い雑用」

いつの間に前にいたのか笹倉さんは我慢していた煙草を口にくわえて、顎で中に入れと促した

「………雑用て」

まあ…分かってはいるんだけど

それでも、さっきまで母親と話していたあの紳士な男だとは思えない変貌ぶりに顔を引きつらせずにはいられない

「…二重人格」

「あ゙?なんか言ったか?」

「いいえ。なんにも!!」

この地獄耳め

タラリと背中に冷や汗が流れ落ちるのが分かり、私は勢いよく首をブンブン横に振ると斜めに提げたボストンバッグを担ぎ直して笹倉さんの元へ走った


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