不器用な指先
寒い時、決まって人は愛おしい誰かの隣にいたくなるんだから。
頬を撫でるどころか、突き刺すような凍え風は体温を低下させていく。
せめて髪を下ろして素肌を防御しようと、輪ゴムに――
「触るなと言っただろう。このチビ」
涙が止まる。
目が開いた。
心が動く。
いつのまにいたのか、屋上にはもう一人いた。
「椎野、さん……」
名を呼ぶ。
呼べば私に近づく彼。
息を切らしたような姿でも、いつものように威圧感ある果敢な姿は保っていた。
「なんて顔をしている。屋上で泣くな。ある意味、洒落にならないイメージを持ってしまう」
「な、にしに……っ」
彼から距離を取る。
唾を飲み込み、涙声で彼を警戒した。