不器用な指先
「来ないで下さいっ」
「だからそんなセリフをここで吐くな。寒いんだ、ささっとこっちにこい」
手を伸ばされた。
言っておくが、自殺願望はないので私が今いるのは安全圏。フェンスから三メートルは離れている場所で。
「来ないで下さいってば!」
なおも近づく彼にはそれしか言えない。
来てくれて嬉しいが、許す――あの手を取ることなど毛頭出来ない。
距離を保ちつつ、じりじりと校舎内に続く入り口に近づいた。
逃げる気満々だった。
「いい加減にしておけ。髪の毛、黒髪から茶髪にするぞ」
「うるさいっ」
強気な発言をしたのに、ぎろりと睨まれて弱気になってしまう。
いつもこの様だ。
付き合っているはずなのに上下関係があるような。