不器用な指先


「来ないで下さいっ」


「だからそんなセリフをここで吐くな。寒いんだ、ささっとこっちにこい」


手を伸ばされた。
言っておくが、自殺願望はないので私が今いるのは安全圏。フェンスから三メートルは離れている場所で。


「来ないで下さいってば!」


なおも近づく彼にはそれしか言えない。


来てくれて嬉しいが、許す――あの手を取ることなど毛頭出来ない。


距離を保ちつつ、じりじりと校舎内に続く入り口に近づいた。


逃げる気満々だった。


「いい加減にしておけ。髪の毛、黒髪から茶髪にするぞ」


「うるさいっ」


強気な発言をしたのに、ぎろりと睨まれて弱気になってしまう。


いつもこの様だ。

付き合っているはずなのに上下関係があるような。


< 14 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop