不器用な指先



――思っても、思わないようにした事実があった。



これは、自分よがりな気持ちではないかと。


つまりは好きというこの想いは私にしかなく、独りよがりでしかないという。


「ずっと、椎野さん、は……」


考えたくなかったことが口に出る。


全てが疑問だった。
彼への疑問――いや、言いたかったことが出たにすぎない。


「椎野さんは良いですよね。愛さなくても愛されるような見た目で……!何もしなくても、そんな、そんなに、かっこよくて……」


退路まで後少し。


「私と違って、“嫌われちゃうんじゃないか”って言う不安もなくて堂々していて……!

わた、私、は……大好きだから、嫌われるのが怖いのに」


退路まで一直線。
また走ればいいと見限り。


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