不器用な指先
「こんな不安を持たせておきながら、私が好きじゃないなんてっ。
付き合いたくないなら、付き合いたくないって言えばいいじゃないですか!」
捨てぜりふだったこれは。
後ろを向き、スタートダッシュを決めようと。
「待て、童顔女」
髪を――ポニーテールを思いっきり引っ張られた。
ぎゃっ、という声を出して止まってしまう。
別の意味の涙が出てきそうになり、何するんですかっという決まり文句が。
「誰が好きじゃないと言ったんだ」
彼の言葉で言えなくなった。
振り向けば、真面目な顔でそんなことを言う彼。
――思えば、彼は私と話をする時は決まって。
「嫌われちゃうんじゃないか、だと?俺がお前を嫌うと思っているのか、とんだ誤解を持っているな」
真剣な――嘘ない真実のみを語る顔で話してくれていた。