不器用な指先
「いい加減そんな考え捨てなければ、頭を無理やりこじ開けて改造してやるぞ」
ハンカチを持っていなかったのか、自分の袖口で私の目やら鼻やらをごしごしと吹き始めた。
「俺はお前が好きだ。それ以外の事実など全て、削除しておけ」
着ていた制服(上着)を私にかける。
ワイシャツ一枚の彼はとても寒そうでありながらも。
「必要ない事実は削除しろ。実際、俺も――」
無表情な真面目の口端が綻ぶ。
冷たいがあったかいに変わったのは、一つの――たった一つの優しい気持ちがあったから。
「お前が俺を愛してくれているという事実以外はもう捨てた。不安なんかない、自信があるからな。
お前は俺のそばから離れないという、それが」