不器用な指先
もはや鬼畜ではなく、魔王がいた。
「椎野(しいの)さん……、いつまで後ろに立っているんですか。背後霊願望?」
「気にするな」
「いや、目線が……。目からビーム出してませんか、頭がハゲそうな痛みが」
「だから気にするなと……」
髪を束ねた部分に指が当てられた。
「言っているだろう」
体が跳ねそうになり、跳ねたのは心臓。
「家に帰るまで絶対に外すなよ」
多分頭は馬の尻尾状態かと自分で予想してみるけど。
鏡が見られないのは耐え難い。
自分(顔)が酷いことになっているんじゃないかと。
髪を上げるだけで大分印象は変わってくる。
「あ、あの。本当に鏡もダメですか……」
「くどい」
「あ、あはは。そう、ですか」