わたしが本当に好きな人
ガチャリ。
後ろで扉の開く音。
「仁美?」
「ハズレ」
振り返ったわたしの目に映ったのは仁美ではなく……
「せ、んせい……」
「やっぱり泣かせたのは、僕かな?」
「そ、そんな、泣いてなんか……」
わたしは慌てて目を拭う。
「どうしてここにいるんですか?」
わたしの精一杯の強がり。
それにも先生は笑って応える。
「君のピアノを聴きに……」
「そんなことしたら彼女に怒られません?」
「やっぱり聞いてたんだ。あれはその場の口実だよ」
「でもモテるのは本当なんですよね?わたし、女子たちの嫉妬を受けるのは御免ですから」
「それを言うなら、こんな所に来ている僕こそ、君に言い寄る男たちの嫉妬を受けてしまいますよ」
他の男よりも、先生に言い寄られなきゃ意味がない。
そんな我が儘が言えたらどんなに楽だろう。
「関係ありませんよ、『クールだ』とか『知的だ』とかいってる男なんて」
わたしに言い寄る男はそんな月並みな言葉ばかり投げかけてくる。
本当のわたしなんて、好きな人を諦めきれない、カッコ悪い女なのに。
「ぼくも、そんな見る目のない男たちの一人になってしまうのかな?」
「はい?」
この人は何を言っているのだろう……
「ここに合格して喜んだ顔が可愛くて、ケアレスミスに悔しがるしぐさにも愛嬌があって、ピアノを弾く姿は美しくて、そして、『他人』が告白されているのを見て涙する、そんな君を好きな僕は、その男達と一緒なのかな?」
まさか……
わたしの耳が間違っていなければ、先生がわたしを好きって……
「わたしを好きって、本当なんですか?」
先生は微笑んでるけど、目は真剣だ。
「ええ、合格発表のときに、一目惚れでしたよ」
「夢じゃない?」
「ええ」
「本当?」
信じられなくて、立ち上がって先生の頬をつねる。
「本当に本当です。そういうのは自分のでやって下さい」
「あっ、すいません……」
恥ずかしい……
慌てて両手を後ろに回す。
「そういう反応をするってことは、自惚れていいのかな?」
それはこっちの台詞です。
「はい、わたしも好きですから……」
また涙が溢れてくる、今度は嬉し涙が。
後ろで扉の開く音。
「仁美?」
「ハズレ」
振り返ったわたしの目に映ったのは仁美ではなく……
「せ、んせい……」
「やっぱり泣かせたのは、僕かな?」
「そ、そんな、泣いてなんか……」
わたしは慌てて目を拭う。
「どうしてここにいるんですか?」
わたしの精一杯の強がり。
それにも先生は笑って応える。
「君のピアノを聴きに……」
「そんなことしたら彼女に怒られません?」
「やっぱり聞いてたんだ。あれはその場の口実だよ」
「でもモテるのは本当なんですよね?わたし、女子たちの嫉妬を受けるのは御免ですから」
「それを言うなら、こんな所に来ている僕こそ、君に言い寄る男たちの嫉妬を受けてしまいますよ」
他の男よりも、先生に言い寄られなきゃ意味がない。
そんな我が儘が言えたらどんなに楽だろう。
「関係ありませんよ、『クールだ』とか『知的だ』とかいってる男なんて」
わたしに言い寄る男はそんな月並みな言葉ばかり投げかけてくる。
本当のわたしなんて、好きな人を諦めきれない、カッコ悪い女なのに。
「ぼくも、そんな見る目のない男たちの一人になってしまうのかな?」
「はい?」
この人は何を言っているのだろう……
「ここに合格して喜んだ顔が可愛くて、ケアレスミスに悔しがるしぐさにも愛嬌があって、ピアノを弾く姿は美しくて、そして、『他人』が告白されているのを見て涙する、そんな君を好きな僕は、その男達と一緒なのかな?」
まさか……
わたしの耳が間違っていなければ、先生がわたしを好きって……
「わたしを好きって、本当なんですか?」
先生は微笑んでるけど、目は真剣だ。
「ええ、合格発表のときに、一目惚れでしたよ」
「夢じゃない?」
「ええ」
「本当?」
信じられなくて、立ち上がって先生の頬をつねる。
「本当に本当です。そういうのは自分のでやって下さい」
「あっ、すいません……」
恥ずかしい……
慌てて両手を後ろに回す。
「そういう反応をするってことは、自惚れていいのかな?」
それはこっちの台詞です。
「はい、わたしも好きですから……」
また涙が溢れてくる、今度は嬉し涙が。