わたしが本当に好きな人
放課後、わたしは今まで返ってきた分の答案を見直すことにした。
教室にはわたし意外誰もいなかった。
ふと窓の外を見てみる。
見学に来たときと同じだ。
「やっぱりこの高校にしてよかった」
「あれ、白井さん、まだ残っていたんですか?」
少しばかり感慨にふけっていると、先生が中に入ってきた。
「あっ、はい、テストの見直しをしていて……」
「家でしないんだ?」
わたしはどう答えていいか迷った。
「どうしてわたしがこの高校を選んだか分かります?」
先生は少し困った顔をした。
質問を質問で返したから当然か……
「やっぱり学力かな?」
「もちろん、それも少しはありますけど……」
「ってことは、結構頭よかったんだ?」
「よしてください……」
確かにここは進学校だけど、そんなことが聞きたいわけじゃない。
「見学に来たとき、ここの桜が綺麗で驚いたんです。校舎に入ったら外の景色がさらに綺麗で、わたしの家の周りはマンションばかりだから……」
都内といっても、郊外に位置するこの学校の周りには高い建物があまりない。
綺麗な空……
庭付きの家や、家庭菜園をしている家……
小規模ながら畑もあって……
都市部育ちのわたしにはどれも新鮮だった。
「それを見たときに、今までの悩みなんかが吹き飛んで、それでもうここしかないって思ったんです。安直でした?」
先生は首を横に振る。
「全然。入学前からその学校の良さを発見するのは立派なことだよ」
まさか、そんな言葉が聞けるとは思わなかった。
照れて思わず顔が赤くなってしまう。
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