蝶々
私はそれからなんとなく菜穂と距離を置こうかと思い始めた。

菜穂は悪くない。
ただ、私の中に広がる、この気持ちが、苦しい。
「おはよう」

今日の菜穂との一日の始まりの挨拶はロッカーだった。
いつもは会えた嬉しさににっこり微笑んで

「おはよう」

胸から込み上げて来るものを押さえ、ほとんど無視に近い形で

「…おはよ」

と言った。
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