Peach
第6話 誰もいないプール
『プール掃除おわりー!!
みんな、ごくろーさん!
気をつけて帰れよー!!』
先生は私たちに声をかけると、『俺今から職員会議あるから、最後のやつ鍵しめといてー』と言い残し、足速に校舎へと戻って行った。
ぼんやりしていたら、いつの間にか他の人はみんな帰ってしまってた。
私と藤原創を除いて。
藤原創が気になって、私は彼の方を向く。
目が合った瞬間の彼の行動に、私は目を見開いた。
プールサイドの湿ったタイルの上で、彼は深々と土下座していた。
「えっ……!!??
ちょっ……何してるの…!!???」
藤原創が突然そんなことする意味が、私にはさっぱりわからなかった。
「ごめんッッ!!!」
誰もいなくなった放課後のプールに、藤原創の声が響く。
何を謝ってるの…?
悪いのは私なのに…
傷付けたのは私なのに……?
彼は額をタイルにくっつけたまま、動こうとしない。
「俺さ、バカだからさ、どうしたらいいかわかんなかったんだ…!」
「……え?」
「焦って、舞い上がって、知らない間に及川さん傷付けて、泣かして……
俺、サイテーだよなっ…!!
本当に、ごめんッッ!!!」
私は彼がなんのことを言ってるのか、やっぱりわからなかった。