Peach


「お母さーーん!!
 
 お弁当箱、学校に忘れてきたから取りに行ってくる~」


二階からリビングに向かって声をかける。


「あら~、珍しいわね!
 
 もうちょっとでご飯だから、遅くならないように急いで帰っておいで」


「はーい」


私はまた、窮屈な制服に着替えて、自転車に乗った。


さっき見た空より、オレンジが濃くなっている。


私は急いで学校へと向かった。







学校に着くと、グラウンドではまだ部活生たちが部活に励んでいた。

こんな時間に学校に入るのは久しぶりだなぁ~なんて思いながら、教室へと急いだ。


シンとした教室が、なんだか切なく感じる。



「だーれもいない…」


ポツリと呟いてみる。


静かな教室に小さな振動が起こるけど、すぐに消えた。


ふと、窓の外に目をやった。


グラウンドに面した窓からは、サッカー部が練習する姿が見える。



思わず捜してしまう、彼の姿。


藤原創が部活している姿なんて一度も見たことなかったから。








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