不可解な恋愛 【完】
小さくなった煙草を潰していたら、今度は彼女のクレームブリュレが運ばれてきた。
カラメルに覆われた、甘そうなブリュレ。
その表面を壊しながら彼女は、心底幸せそうな顔をした。
『ああ、儚い』
「なに言ってんの?」
『壊れちゃった』
「お前…杏奈って、ちょっとおかしいんだな」
『そう?そんなことないと思うけど』
「そんなこと大ありだよ」
俺が苦笑すると、彼女は俺を見つめてまた笑う。
神崎さんって笑うとかわいいね、なんて言いながら。
そんなこと奏音にも言われたことがなかったから、ちょっと調子が狂う。
もう1本煙草を取り出すと、反射のようにまたライターを出した彼女の手を
今度は制した。