不可解な恋愛 【完】
水島の手によって可愛い箱にラッピングされた指輪。
それを手に、俺は杏奈の家に向かった。
彼女に会うのは大分旅行以来だったから、多分1ヵ月振りくらい。
どんなに誰かを愛していても、仕事は俺に暇を与えてくれないのだ。
やっぱり恋愛よりも、人を殺すほうが時間もとらなくて簡単だ、と再び思う。
夕方の6時前。
杏奈は出勤直前のようで、髪をぐるぐると巻いていた。
久しぶりに見た「飛鳥」仕様の杏奈に、なぜかちょっとだけ笑いがこみ上げる。
杏奈はそんな俺を見て不機嫌そうに、どこがおかしいのか尋ねた。
「飛鳥ちゃん、なんかさらに痩せたよね」
『うん。飛鳥ちゃんお仕事頑張ってるから、少し痩せちゃったの』
「お前これ以上痩せんなよ。太れ」
『はーい。ていうか神崎さんと会うの、久しぶりすぎて緊張しちゃう』
「緊張って」
『なんか、抱きついたりとかできない。恥ずかしくて』
「処女みたいなこと言ってんじゃねぇよ」
腰に手を回して杏奈を引き寄せる。
髪からとてもいい匂いがして、彼女を離したくない、とまた強く思ってしまう。
結局俺は、杏奈のほうがより好きなのだろうか。わからないけど。