不可解な恋愛 【完】
指輪だって、水島は奏音ありきで話を進めていたが
俺はこれを選ぶとき、杏奈のことしか考えていなかった。
杏奈の好きな色がピンクであることとか。杏奈の指がだいたいどのくらいの細さなのかとか。
杏奈を抱き締める腕が、杏奈が埋まっている胸が、脳みそが
杏奈を愛している、と云う。
想いが溢れて、しょうがない。
「はい、杏奈」
『…なにこれ?』
「プレゼント」
小さな箱を渡す。杏奈は目を輝かせて、中身を取り出した。
キラキラ光る指輪に、もっとキラキラ光る瞳。
今にも泣きだしてしまいそうな杏奈に、思わず笑ってしまう。
指輪ひとつで、女ってこんなに喜ぶんだな。
ある意味水島に感謝。だって俺の思考だけではきっと、女に指輪をプレゼントするなんて考えには至らない。
たとえ思いついたとしても、ジュエリーショップに足を運ぶ自分を想像すると、寒気がする。