不可解な恋愛 【完】
『仕事、行きたくない…』
「でも、もうそろそろ時間だろ」
『…そうだね』
抱き締める手を緩めると、杏奈は寂しそうに俺から離れた。
その右手薬指には、シルバーリング。
サイズは奇跡的にも、ぴったりだったようだ。
杏奈は化粧を直すと言って、俺に背を向けた。
その背中に、何故だか一気に、感情がこみ上げる。
「杏奈、…やっぱり行くな」
後ろから、杏奈を抱き締めた。
杏奈が俺から離れて知らない男と会うのが、今日はどうしても許せない。
ずっと一緒に居たかった。杏奈に触れていいのは俺だけだ、なんて思った。
俺はやっぱり、しょうもない男だ。