不可解な恋愛 【完】
Episode 12
数週間後のある土曜日の夜。俺はひとりで再び大分に向かった。
今日こそは、金森と話をしよう。あのくそガキにも1回ちゃんと挨拶しないとね。
金森の部屋の前。俺は、あの日と同じようにドアを叩いた。
5回目のノックで、玄関に物音。そして、扉が開いた。
「久し振り、マスター」
「……!」
顔を出したのは金森本人だった。
彼は俺の顔を見るなり急いでドアを閉めようとしたけれど
もう遅いって。
ドアの間に靴を挟み込む。半開きになったところに手をいれこんで、力任せにドアをこじ開ける。
弱弱しい金森の腕は、すぐにドアノブから離れた。
部屋の奥から子供の声がする。あのガキか。
「おとうさーん?」というガキに、来るなと大声を出す金森。
「近所迷惑でしょ。いーれーて」
「帰って、ください」
「はぁ?ふざけんな、よっ」
ガン!とドアを一蹴り。
マンション中に響き渡る様な轟音を立てたドア。俺の脚力ってこんなにすごかったんだ。
面白くなって、何度もドアを蹴り上げると、金森は観念したのか俺を玄関の中に入れた。
部屋の奥は、先ほどとは打って変わって、水を打ったように静かになった。
きっとこいつの嫁が、ガキを黙らせているんだろう。状況把握が早いな。俺がいつか来ることは、わかっていたようだ。