不可解な恋愛 【完】


「まずは、今日いくら払えるか教えてよ、金森さん。俺らの予定では今日は100万円返してもらおうかなーってとこなんだけど」


「…今日は、本当に、無理で、」


「俺も暇じゃねんだよ。わざわざてめぇのためだけに大分に来るのも面倒だ。今日出せるだけの金用意しろ!」


「ひっ…、」






今度は下駄箱を一蹴り。

棚の上のインテリアがばらばらと落ちて、金森の頭を直撃した。

ああ、滑稽。



俺のこんな姿を見たら、杏奈はどう思うんだろう、とふと思う。

きっと幻滅するんだろうな。

じゃあ、杏奈の好きな俺は、一体どんな俺なんだ。

これが、本当の俺のはずなのに。



頭を抱えて唸る金森をぼんやりと見下ろしながら、上の空になっていた自分を咄嗟に戒める。

今はこいつのことだけに集中しよう。
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