不可解な恋愛 【完】
「利子は勘弁してやるよ、今回の借金」
「え?」
「元金の5000万を組織に、損害金の300万を飛鳥に返済する。それだけでいい」
「そ、そうなんですか」
「おー。ボスがそう言ってんだから、有り難く思ってね」
「…ありがとうございます、」
「できるだけ早く、まず300万を返済しろ。」
こんな返済能力の低い人間に、高い利子を払えるわけがないことは俺たちだってわかっている。
利子を取らないと言えば、こいつも逃げずに借金を返済する気になるだろう。
踏み倒されるよりは断然マシなのだ。
だが、300万を早めに返済しろ、というのは上からの命令ではなかった。
もちろん、俺の勝手な感情から生まれた勝手な言葉。
どうしてもこいつに、謝らせたかったのだ。杏奈に全ての責任を負わせようとしたことを。
「飛鳥は今でも死に物狂いで働いてんだよ。あいつの気持ちがわかるか、」
「…はい、すみ、ま、せん」
「いつか連れてくるよ、あいつのこと」
「はい、」
「そしたら土下座して謝れ」
「はい、わかりました、」
またもや女々しく涙を見せた金森。
何を思って泣いているんだろうか。
どうせ自分のことしか考えていないのであろうこいつを見ていると、やっぱり無性に腹が立って
玄関に置かれていた靴を手当たり次第に蹴散らして、家を出た。