不可解な恋愛 【完】
液晶に表示された、杏奈のフルネーム。
なんだか知らない人の名前のようで、不思議な気持ちになる。
通話ボタンを押すと、乾いた呼び出し音がしばらく鳴って、留守番サービスセンターのおねえさんの声が聞こえてきた。
短く舌打ちをして、電話を切る。
最後に会ったあの日、やっぱり彼女を行かせなければよかった、と思った。
抱き締めたまま、俺に拘束してしまえばよかった。
毎晩毎晩、彼女はどこで何をしているのだろうか。朝までここで待てば会えるのだろうか。
今頃、俺の全然知らない誰かに抱かれているのだろうか。指輪は外されてしまっているのだろうか。
そこまで考えて、もう、何も考えるのをやめた。
杏奈が他の男に弄ばれている姿なんて想像したら、反吐が出そうだ。
まさか自分がこんなに独占欲の強い男だったとは思ってもみなかった。