不可解な恋愛 【完】
杏奈が姿を消してから、20日が経った。

俺はもう、部屋に様子を見に行くのをやめた。

一度だけ朝まで待ってみた日もあったが、やっぱり杏奈は帰っては来なかった。



だが、20日目の夜、俺の携帯が初めて杏奈からの電話を受け取ることになる。

仕事帰りの信号待ち。運転中だ、なんて関係ない。もちろん即座に電話に出た俺に、杏奈は少し驚いていた。






「お前今までどこで何してたんだよ」


『ごめんね神崎さん、ずっと連絡できなくて』


「質問に答えろ」


『ちょっと体調を崩してて、入院することになっちゃって』


「入院?」


『うん。体調崩したっていうか、ただの過労なんだけど』






電話の向こうでへらりと笑っている杏奈が容易に想像できた。

呆れるとも、安堵とも違うけれど、なんとなく溜息が出る。

とりあえず、進路変更。家へ帰ろうと思っていたが、杏奈の家へ向かうことにした。

杏奈が、神崎さんに会いたい、と言ったから。
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