不可解な恋愛 【完】
『仕事辞めちゃったー』
「…そうなんだ」
『もう続けられないなぁと思って』
「そんなに悪いのかよ、体」
『別に。でもこのまま続けるのは良くないですよーって。お医者さんが』
「そうか。医者の言うことは聞いとけ。間違いないから」
『イケメンだったなぁ、私の担当医』
「俺より?」
『神崎さんより』
「死ね、担当医」
『子供ねぇ、神崎さん』
久しぶりの杏奈の体。ぎゅうっと抱き締めるけれど、手ごたえが全くない。
それくらい杏奈の身体は細くなっていた。あまりの骨々しさに少しぞっとする。
右手に付けられたリングも、指から落ちそうになっていた。
どこか、ぼんやりと。だけどしっかりと、杏奈は話す。
何度も会いたかったと口にしては、勝手にいなくなってごめんと謝って、笑顔を向けた。