不可解な恋愛 【完】
『どうやって生活していこうかな、これから』
「酒飲む仕事はやめて、レジ打ちのパートでもやれよ」
『…お金がいるのに』
「金なら俺がくれてやるよ」
『いらないよ。人のお世話にはならないって決めてるの』
「頑固だなぁお前も」
『でも、しばらくはゆっくりしようかなぁって思ってる』
「そうしろ。食うもん尽きたら何か持って来てやるよ」
『飼育係みたいね、神崎さん』
彼女の髪を梳くと、少しパサついたそれはぎこちなく指の間をすり抜けた。
心身ともに疲れている様子の杏奈には、やはり休暇が必要だろう。
…とは思ったけれど、欲とはどうしてこうも、理性に勝るものなのだろうか。
首に巻きつけられた細い腕と、落とされた口付けに酔って。彼女を抱いた。