不可解な恋愛 【完】
周りを見渡せば、本当にしっかりと仕事をしているのであろうサラリーマンとOLが楽しそうに話をしながら食事をしていたり
小さな子供にとびきりのお洒落をさせて連れてきている夫婦が食事をしていたりと、色とりどりだ。
俺は、いつまでこの仕事を続けるんだろうか。
一生涯、俺はこの仕事を続けて、いつか組織のトップを継いで
石田さんの考えているプランを全て実行してやろうと思っていた。
奏音は、自分がトップを退くまでは結婚はしないと言っていたから
俺がいつか老いぼれた奏音をもらってやろうか、くらいに思っていたのだが。
例えば、俺が杏奈と家庭を作るとしたら。
俺はいつまでもこの仕事を続けていくべきではないのかもしれない、と最近思う。
人殺しの借金取り。詐欺もやったし恐喝もやった。そんなことを続けていく父親なんて、生まれてくる子供が嫌だろう。
確かに、普通のサラリーマンよりも稼ぎはいい。きっと杏奈と子供には良い暮らしを提供できるだろう。
けれど肩身の狭い思いを一生させてしまうのは、目に見えている。
それほど真剣に、杏奈との将来を考えている自分に驚いた。
同じ夜景を見ても、きっと彼女と俺とでは考えていることは全く違うはずだ。
素直に、ただ綺麗だ、なんてそんな風には思えない自分。
杏奈に目線をやると、彼女は少し憂いを含んだ表情でキラキラと輝く光の粒を眺めていた。
その表情がとても儚くて、思わず生唾を飲む。