不可解な恋愛 【完】
俺だって何も、生まれたときからやくざだったわけじゃない。
素直で幼かった時代だってもちろんあったし、ぐれてはいたけど義務教育を受けている時代もきちんとあった。
だが、観覧車というものに乗った記憶は今までの人生で一度もない。
ましてや好きな女と、ライトアップされた観覧車に乗って、夜景を眺めるなんて。
近くで見ると、観覧車とやらは意外と威圧感のあるものだった。
こいつが倒れてきたらどうなるんだろ、なんてくだらないことを考えているうちに、ゴンドラへ通される。
もたもたしている俺のスーツの裾を引っ張って、杏奈は俺を籠の中へ誘った。