不可解な恋愛 【完】
「観覧車乗るのとか、初めてなんだけど」
『うそ?』
「こんな進むの遅ぇんだ」
『そうだよ。あと、観覧車のてっぺんってね誰にも見えないから、カップルはみんなキスするんだよ』
「そうなの?気持ちわる」
『神崎さんって全然ロマンスとかわからないのね』
「俺にロマンチシズムなんか求めんなよ」
ああ、そういえばこの間もこのセリフ言った。
ゆっくりゆっくりのぼっていくゴンドラ。この遅さは性に合わないけれど。
確かに愛を育む恋人たちにとっては、この小さな遅い箱は最高の場所だろう。
窓の外の景色を眺める杏奈が、大空を飛びたがっていながら、籠に閉じ込められている鳥のように見えた。
その横顔はやっぱりひどく儚げで、本当に消えてしまいそうだった。
彼女の手首をぐっと掴んで自分に引き寄せる。
重さが片側にだけ偏ったゴンドラが、ぐらぐらと揺れた。
そのまま彼女に口付ける。最初は驚いた表情を浮かべていた杏奈も、最後には俺の後頭部に手のひらを回して指で髪を弄んでいた。
好き。
大好き。
一生一緒に居たいかも。