不可解な恋愛 【完】
「今日会えない?」
店を出た後、杏奈とはすぐに別れた。
彼女は俺に連絡先の書かれた名刺を押し付けたけど
俺は3つ歩いたところにあったゴミ箱にそれを捨てた。
そして、いの一番に奏音に電話をした。
自分の女以外の女と一緒の時間を過ごしてしまって
その女に好きだと言われた事実に、少し動揺している自分が情けない。
こういうめんどくさい惚れた腫れたは、苦手だ。
『どうしたの、急に』
「急じゃねーよ。どんだけ我慢してると思ってんの」
『あら、そうだったの?』
「あらじゃねーよ。会える?会えない?」
『今日は会えるけど、』
「じゃあお前、今日仕事終わったら俺ん家に帰って来い」
久しぶりの奏音の声は、ちょっとだけ眠たそうだった。
忙しい女に会おうとせがむ ……俺の一番したくないことだったんだけど。
杏奈という存在の登場が、俺の世界を狂わせている気がしてならなかった。
胸騒ぎ。なんでだろ。当たるんだよな、こういうのって。
最近ずっと、寝付けない夜が続いていたが
その夜、訪ねてきた奏音を思いっきり抱いて
彼女を胸に閉じ込めたまま、久しぶりにぐっすり眠った。
やっぱり俺は、このくらい抱き心地のいい女が好きだ。