不可解な恋愛 【完】
「…お前、こんな至近距離で勢い付けて抱きついてくんなよ」
『神崎さん…、大好き』
「はいはい、知ってる知ってる」
『神崎さんは?…どう思ってる?』
刺されたかと思った、ちょっとだけ。
杏奈が急に突進してくるから。
苦笑する俺に、至って真剣な杏奈。なぜか声は涙声。
こんなに別れを惜しまれたことは、今までないのだけれど。
「俺も大好きだよ、杏奈のこと」
もう二度と言わねぇからな、と言うと、杏奈は俺の背中に額を擦りつけながら
うんうん、と何度も頷いた。
腹に回った彼女の腕を解く。彼女に向き直してその額にキスを落とすと、彼女はやっと笑った。