不可解な恋愛 【完】
「神崎は?この仕事いつまでやるつもり?」
「さぁ。いつかは辞めようと思ってるけど」
「なんでだよー。お前頭になりたいって言ってたじゃん」
「もっとなりたいもんがあるんだよ」
「なにー?教えてー教えてー」
「嫌だ。でも、組織から抜けるは簡単じゃないからな」
「殺させるかもよ」
「志半ばで死にたくねぇな」
今度は俺が笑う。水島は少し難しい顔をして、奏音が聞いたらなんて言うだろうな、と小さく言った。
こいつはいつでも奏音の肩を持つのだ。
水島の家は閑静な住宅街に佇むタワーマンション。
最近俺が通っている借金を抱えた貧乏な奴らの住む家とは雲泥の差だ。
独り身のくせにこんなマンションに住むなんて、と思いつつ、自分もたいして変わらないようなところに独りで住んでいるからなにも言わない。
「じゃあね、龍。ありがとさん」
「おー」
「奏音と、浮気相手によろしく」
「なんでお前がよろしくする必要があんだよ」
「今度会わせてね、その浮気さんに。いかほどにカワイイか俺が審査してあげる」
「黙れ。帰れとっとと」
「あー怖い怖い」
水島はやっぱり女子高生のように、ひらひらと俺に手を振って
俺の車が走り去るのをきちんと見届けていた。気持の悪いやつだ。