不可解な恋愛 【完】



神崎さんへ。


この手紙を見つけてくれてありがとう。電気を点けたまま、鍵もかけずに居なくなっている私に、驚いていることだと思います。でもそうしないと、私がここから居なくなっていることに神崎さんが気付かないかなと思って。

結論から言うと、私は引っ越すことになりました。ヒントは「ほ」がつくところ。探してもいいけど多分見つからないと思います。勝手でごめんなさい。

神崎さんと過ごした時間は、私にとって本当に幸せな時間でした。男の人と旅行に行ったのだって、神崎さんが初めてでした。ずっと寂しかった私にとって、神崎さんは太陽のような存在でした。無愛想だし、怖いし、冷たいし、だけど本当に私のことを考えてくれていたこともちゃんと気づいてたよ。

勝手に好きになって、勝手に愛人を希望して、そんなわがままな私を受け入れてくれて本当にありがとう。神崎さんやっぱり大好き!でも、もう今後きっと、神崎さんに会うこともないのだと思います。最後まで勝手な女でごめんね。

私と別れてください。本当はこの間のデートの時に言おうと思ったんだけど、どうしても神崎さんの顔を見たら言えませんでした。この手紙を読み終わったら、私のことは忘れて、彼女さんのところへかえってください。

本当に本当に、大好きでした。というより、今でも、まだ好き。今まで本当にありがとう。神崎さんとの思い出は全部忘れません。体に気を付けてください。さよなら!


PS. 今月いっぱいでこの部屋の契約が終わります。なのでそれまでに、この部屋にあるものを全部担保にしてお金に換えてください。もう全部必要ないので、借金返済の足しにしたいのです。

一度も使っていないブランドバッグなんかもあります。家具もお客さんからのプレゼントの高価なものもあります。

本当にはした金にしかならないとは思うけど、少しでも神崎さんのメンツが立てばと思います。

返済途中で居なくなってしまって本当にごめんなさい。許してください。



杏奈より
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