不可解な恋愛 【完】



何かが音をたてて崩れていく、なんてよく言うが

何かが崩れる音なんて聞こえなかった。

ただただ、静寂の中で、全てが終わりを告げていた。



つっこみたい部分がありすぎる。

引っ越すって、高校生の別れじゃあるまいし。何故だ。何処へだ。



ただ、最後のデートの日、杏奈がとても不安定に見えた理由が合点した。

別れを告げようとしていたなんて、気づきもしなかった。

俺がいつまでも、どっちつかずでふらふらしていることに不安を抱えているのだと思い込んでいた。



どうすればいいんだ。どうすれば、杏奈を手放さずにいることができる?

もう遅いのだろうか。組織のネットワークを使って捜索すべきなのだろうか。

焦燥感だけが募る。どうにかしたい。でも、どうしようもない。

だって杏奈はもうすでに、俺の手の届かない場所に行ってしまったのだから。
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