不可解な恋愛 【完】



涙なんて、流さない。俺は男だ。

終わってしまった恋愛にしがみつくような真似だってしたくない。

それに俺には奏音がいる。あるべき場所に戻っただけだと思えばいい。



だけどどうしても、気持を切り換えることができなくて

俺は何度も杏奈の携帯に電話をしたり、メールを入れたりし続けた。

自分の女々しさに気付かされて、だけどそれ以上に、やっぱり杏奈に会いたかった。



杏奈が居るのがどんなに遠い場所だったとしても、すぐに飛んで行く覚悟があった。

逢いたい。どうしても逢いたいんだよ。

杏奈に逢わずに死んだら後悔する、と、それくらい杏奈が好きだから。



奏音にも会う気になれなかった。

家に帰れば奏音が居るかもしれないからと、俺は何日も事務所で寝泊りをした。

俺はいつまで、こんな毎日を繰り返すのだろう。



杏奈が今、どこで、何をしているか、知りたい。

どんな顔で、何を考えているのか、教えてほしい。

少しくらい俺のことを考えてくれていればいいな。

どうしても、杏奈の影と杏奈の記憶に、別れを告げられない自分がいる。
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