不可解な恋愛 【完】
上司に適当に嘘をついて、俺は病院へ向かった。
なぜ大分なのか、そもそもなぜ病院なのか、鈍った頭では推測さえできない。
とにかく早く、杏奈に逢いたかった。
俺に会えば、杏奈は目を覚ますかもしれない。そんな希望も捨てられずにいた。
杏奈はいつも、好きだと泣いたり、好きだと笑ったり
思えば俺は、杏奈から「好き」をもらってばかりだった。
俺はいくつ、彼女に好きを返せたのだろうか。
もっと言葉にすればよかった。思うだけでは伝わらないことだってあるのに。
数時間かけて到着した病院。
医者の指定した病室は最上階のとても見晴らしのいいところだった。
白衣に身を包んだ物腰の柔らかそうな男が、黒ずくめの俺を見るなり少し驚いて、でも微笑んで声をかけた。