不可解な恋愛 【完】
医師は俺に、封筒をふたつ渡した。
細長い封筒と、四角い封筒。
四角い封筒を開けると、中から出てきたのは、いつか杏奈に渡した指輪だった。
「指輪は焼かないでほしいと、」
「……、」
馬鹿だと思う。あいつは本当に。
思い出だけを置いていくなんて、ずるすぎる。
どうせなら、天国にでも地獄にでも、全部持っていきやがれ。
もっといい指輪を、いつか彼女の左手薬指に、と思っていた。
馬鹿なのは、俺の方か。思うだけで、何も残してやれなかった。