不可解な恋愛 【完】
「今からこの店に行ってくれ、彼と」
「ああ、はい。でもなんで」
「経営者が裏で蜷川組と繋がっているらしい」
「ああ…そりゃ厄介ですね」
「理解が早いな。今日はひとまず偵察に。一度行ったことのあるお前と、常連の彼なら何も問題なく潜入できるだろう」
蜷川組。
俺たちの組織と対立しているグループだ。
この組のやり方は本当にでたらめだった。
この組が指定する借金の担保は、だいたい人間。
需要もあって、一番高く売れるから。
俺らの組は、人間を担保にすることだけはしない。それをポリシーにしていた。
そういう食い違いも、奴らと対立している十分な理由だが。
このクラブの経営者は、経営難で蜷川組の金に手を出したらしい。
その借金がいつの間にか膨らんで、未だに返せないでいる。
そこで担保にかけられているのが、この店のホステス全員。
来月の期限までに借金を返済できなかったら、ホステスはひとりずつ、別々の場所に売られてしまうそうだ。
でも、問題はそこじゃない。
このクラブがある地域は、石田組の縄張りなのだ。
人の縄張りに土足で踏み込んで、好き勝手やるのは、ルール違反だろ。
「できれば…2週間以内に解決してくれ」
「はい、わかりました」
「最後には僕が動くから」
「はい。任せてください」
俺は、上司と共に、あのクラブへ向かった。